田中一村

奄美大島旅行の大きな目的の一つは、田中一村の作品を見るためだった。若くして南画の天才として嘱望されながら、すべてを捨ててここに移り住み、奄美の自然を描きながら没した画家だ。彼の渾身の遺作を田中一村記念美術館に見た。画集では得られない異質のすばらしさだった。その足で一村の終焉の家をおとずれた。当時からあばら屋に近かったというその家はあまりにも粗末で、これが1977年(昭和52年)まで存命した画家の家とは信じられなかった。生涯を懸けるという意味が少しわかったような気がした。

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